すだまの足跡

技術と社会を考えたい理系大学院生が残したいつかの足跡。

最後の大魔術師

最近読んだ本の中で、古典力学の始祖ニュートンが、かの大予言者ノストラダムスと一緒に紹介されていたので、気になって少し調べてみました。どうやらニュートンも一種の終末予測を物していたようです。彼の著した無名の文章によると、ニュートンは世界は2060年まで滅ばないと予言していたそうです。逆に言うと、2060年以降はいつ世界が大きく変容するか分からないわけで、終末予言の一種とも解釈できるものです。ニュートンがそんな予言をしていたとは。

 

一般的には中世ヨーロッパにおける科学革命を完成させた人物として、その科学的な偉業ばかり伝えられますが、実はそういった分野に負けじと劣らず、オカルト分野にもガッツリ没頭していたのが、このニュートンという人物なようです。彼の自然科学への貢献の象徴として語られる『プリンキピア』も、万有引力という遠隔力の存在を仮定していたため、当時の機械論哲学者からは、中世の魔術的伝統への回帰であると批判されたといいます。また、時間と空間を「神の感覚中枢」と呼んだり、『プリンキピア』執筆と同時に、錬金術や聖書の研究に没頭するなど、神秘主義的側面を多分に持ち合わせていました。

 

ニュートン錬金術関係の研究書類を購入したイギリスの大経済学者ケインズは、ニュートンを「最後の大魔術師」と評しました(ここでケインズの名前が出てくるのも面白いですね)。アリストテレスの自然観が支配していた中世ヨーロッパに突如現れた叡智の光、と思いきや、ニュートン自身はまだ12世紀のルネサンス以来の思想を引きずる「大魔術師」であったのが実際のところで、現在一般に知られている科学史ニュートンの活動をやや偏って伝えているのかもしれませんね。個人的には、むしろ実際の姿の方が人間臭くて好きです。