すだまの足跡

技術と社会を考えたい理系大学院生が残したいつかの足跡。

拒絶に慣れる

Yコンビネータ(YC)といえば今やアメリカで大成功するアクセラレータとして比類なき知名度を誇っていますが、以前『Yコンビネータシリコンバレー最強のスタートアップ養成スクール』を読んでいて、記憶に残ったエピソードが、YCに参加する創業者の一人が語った「拒絶セラピー」体験です。

 

そこでは拒否される痛みに慣れるために、「毎日一回以上違う人から拒絶されるように無理な要求をしなくてはならない」のだそうです。例えば、無料でファーストクラスにアップグレードしてくれるようにフライトアテンダントに頼んだり、列車に乗り合わせた女性に電話番号を聴いたりしたとか。実際にやったら、拒絶に慣れると同時に、ちょっと変な人への道のりを歩み始める事になりそうですが。

 

人間は機械ではないので、面と向かって拒絶されるとふにゃふにゃ落ち込んでしまいますが、その立ち直りを素早くできれば役立ちそうです。YCの話の流れからスタートアップの例を取り上げると、YCに応募したスタートアップがプログラムに参加でき、かつ成功する確率は大体0.5 %くらいだと言われます。この確率を額面通りに受け取ると、私が1回YCに応募して最終的に成功する確率は当然0.5%。一方で3回挑戦すれば、1.49%。100回挑戦すれば、少なくとも一回は成功する確率が大体40%程度になります。打席に立つことが大事ということをストレートに表しています。

 

スタートアップの失敗は潜在顧客からの拒絶を意味しますが、一回やそこらの失敗で投げてしまうとあくまで成功確率は微小なままです。どうせ99.5%避けられないような失敗をいちいち嘆いていては、人生がいくつあったって足りません。成功確率を上げるためにおそらく最も手っ取り早いのは、不屈不撓のベルヌーイ試行マシンと化して何度も何度も何度も挑戦を繰り返せばよい。しかしやっぱり現実的には難しい。それゆえに「拒絶セラピー」のような試みを通した慣れが重要になるのだと思います。