すだまの足跡

技術と社会を考えたい理系大学院生が残したいつかの足跡。

Comfort Zoneから抜ける(ただし命綱を手に)

"COMFORT ZONE ENDS HERE."

 

今年の2月に開催されたスタートアップの祭典、Slush Tokyoの入り口の写真です。「安全地帯はここで終わりだ(=チャレンジはここから始まる)」という意味が込められていると言います。Slushでは、全てのセッションが英語で行われ、普段話すことのない人と話し、普段やらないようなチャレンジする場になるような仕掛けが多く設けられています。

 

Globisのサイトを見ると、Comfort Zoneという言葉は元GEのノエル・ティシーによって整理されたものだそうです。その分類は大まかに分けて3つです。まず、自分が今持っているスキルで対処可能な領域であるコンフォートゾーン、次に今のスキルからある程度背伸びして挑戦する必要のあるラーニングゾーン(人によってはoptimal performance zoneとも)、最後に自分のコントロールがほとんど及ばず過度なストレス状態に陥るパニックゾーンです。

 

言うまでもなく、身を置くに最適だと考えられているのは、コンフォートゾーンを越えたところにあるラーニングゾーンです。ネット上には、いかにコンフォートゾーンを抜け出すかを考える記事が多数存在するようです。それももちろん重要ですが、しかしもう一つ重要なのは、勢い余ってパニックゾーンに頭から突っ込まないことだと個人的に思っています。そうなってしまうと、成功体験の欠如とストレス、それによるパフォーマンス低下がぐるぐる回転してあっけなく死にます。心が。

 

軽度の身体的な怪我と違い、精神は一度壊すとひっじょうに厄介です。回復に長い時間がかかり、それだけでコンフォートゾーンを抜けて得た利益が全て吹き飛ぶ勢いであり、元も子もないとはこの事です。お察しの通り、自分も似たような苦い経験をたくさんしました。

 

大切なのは、危うくなったらすぐに手繰り寄せられる命綱を常に持つことだと思います。アダム・グランの『Originals』では、ダメだった時に引き返せる道を確保している起業家の方が、結果的に成功している可能性が示唆されます。私と違って賢いリスク・テイカーは、リスクを冒すことを必ずしも好みません。リスクの低い安心できる領域を一方で確保しているからこそ、別の領域で大きく挑戦することができる。そういったリスクのポートフォリオ管理を、常に念頭に置くべきなのです。