すだまの足跡

技術と社会を考えたい理系大学院生が残したいつかの足跡。

1+1≠2だから面白い シナジー効果と光の干渉

two people shaking hands

 

昨日の記事でLINEとヤフーの経営統合について書きました。企業の統合や買収が起こる際、お互いの良さや強みを上手く活かし合うことに成功した場合、単純な和以上の結果をもたらす事があります。ビジネス畑の人はこれをシナジー効果と呼びますね。逆に折りが合わないと、お互いの価値を破壊してしまい、1+1=0になってしまったりします。こういう予想外なところが、現実世界の面白いところです。

 

これは何も経営統合だの買収だの難しい話に限ったことではありません。それを実感するためには、2本の指があれば足ります。人差し指と中指を触れるか触れないかのギリギリまで近づけて、その隙間から照明などの明るい方を見てみてください。上手くいくと、指の隙間に細かい縞模様が見えるはずです。今あなたが目にしているものは、自然界におけるシナジー効果の例です。

 

                                           ↑FNの高校物理から拝借した図

 

一言で言うとこれが起こるのは、光の正体が波動だからです。光が指の間の狭い隙間を通った後に向かった方角によって、出てきた光の集団がお互いに強めあったり、逆に弱めあったりしているのです。

 

縞の黒い部分では、光はお互いに弱め合ってしまい、結果はほとんどゼロです。一方、縞と縞の間では、光はお互いに強めあっています。しかもその結果は2ではないーーそこでは、元よりもずっと明るい光が見えているのです。こうした事全てが起こるのは(1+1が2でなくなるのは)光が波の性質を持つからに他なりません。

 

ちなみにこの世の最も根本的な法則を記述する量子力学では、ありとあらゆる物質が波動的な性質を持つ(粒子と波動の二重性)ことをご存知でしょうか。したがって誤解を恐れずに言えば、量子の世界では1+1が2でなくなる事が日常茶飯事で起こります(これを干渉と呼びます)。さあこれでたった今、この記事を読んでいるあなたは、量子力学の大きな魅力の一つを理解した事になります。

 

1+1がいつでも2になる世界はつまらない。しかし、幸い世の中はどんなレベルにおいても、そんな単純なものでは無いようです。そして、まさにそうした性質があるが故にこそ、私たちの目に映る世界は面白いのです。